原作の文庫本を、何度も読み返し味わっていたこの物語をドラマ化したものを、動画配信のU-NEXTで視聴してみた。

前篇・後編それぞれ75分ずつという短い時間に収めるため、また映像作品独特のテンポの良さを演出するため、大幅に脚色されている。

しかしながらその内容は紛れもなく「とんび」だった。

家族の大切さ、ありがたさを再確認させてくれる。

こうした小説の映像化は私の拙いイマジネーションを補ってくれて、とてもありがたいけど、
原作を補足あるいは拡張する以上のものにはならないとも感じる。

少なくとも文章に込められた心の栄養素は、小説でのみ味わえる特別なものなのだなぁと思う。

また、重松清さんの場合、料理の仕上げの薬味のように添えられた魔法の一言によって心が高揚する「マジック」は確かにあって、
僕はそれを重松さんの小説を読む大きな喜びにしている。

作品への愛が強いがゆえに、出てくる不満もある。
例えば道具類は、当時を再現しているのだろうけど、撮影技術が現代風でやけに鮮明だから、ミスマッチ感がある。
フィルムで録画するか、それが大変ならフィルム風のフィルターをかけた方が心に染みるんじゃないかな、なんて素人目には感じた。

あと、たえ子さんの娘がたえ子さんに会いに来るシーン。原作のたえ子さんの畳み掛けるような饒舌が泣かせどころだったと個人的には思うのだが、ドラマのたえ子さん、ほとんど喋らず、むしろ背中で語る脚本になっていて、ちょっとがっかり、である。

とはいえ、ドラマ版ならではのすごく気に入ったシーンもある。
東京へ行くアキラが乗る電車に向かって「フレー!フレー!アキラ!」と叫ぶシーン。それに続く、電車の窓から顔を出すアキラと、電車を見送るヤスとの「お父さーん!」「アキラー!」の掛け合いは、紛れも無い名シーンだ。

他にも、
ヤス:堤真一、たえ子:小泉今日子、ナマグサ:古田新太となんとも豪華なキャストは素直に嬉しい。
また、音楽が大友良英さんというのも嬉しい。
キョンキョン、古田新太、大友良英、とくれば、のちの「あまちゃん」に繋がるじぇじぇじぇな布陣である。

主題歌は踊ろうマチルダ「箒川を渡って」という曲。このドラマにピッタリのハスキーボイスと素朴なメロディが心にしみる選曲。

原作のファンの方はぜひ一度観てみてはいかがでしょうか。

土曜ドラマスペシャル「とんび」はU-NEXTで視聴できます。
今なら31日間無料トライアル中。

こういった動画配信サービスが百花繚乱の今日、テレビ局も今後は電波を使った配信の広告収入よりも、オンデマンド配信のコンテンツ課金モデルが収益の中心になっていくんじゃないかな、という気もする。
いずれにせよ、コンテンツ・イズ・キング。伝達手段が、電波から地下ケーブルに変わっても、番組制作力は活きるわけで。テレビ局、強い。

ところで、「とんび」の原作を読んだことがないという方は、ぜひともこちらからどうぞ。子育て中のパパは必読の書。家族の愛の形の、一つの典型を教えてくれます。

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